第1章 1部
ほんの少しの短い旅をした。
既に何人も居たキタンの仲間達は皆青年や壮年だった。私みたいな子供が出来る事は足手纏いにならない、それだけだ。
ガンメンを最初に奪う場に居たという、リットナー村のダヤッカにも会った。
ダヤッカは優しく、その『彼』の話をしてくれた。『彼』と一緒に居る人達が私とそう変わらない歳だと聞いて少し吃驚して、安心した。
何体か奪取済みのガンメンも見せて貰う。キングキタン、ダヤッカイザー、キッドナックル、アインザー。他の何体かも。
私も欲しいと言ったら「子供はもう少し我慢してからな」とあしらわれた。
どのガンメンも魅力的だった。獣人が乗っていたおぞましい物の筈なのに、人間が乗った方がしっくり来る。そんな印象だった。
だからこそ日々想いは募る。最初に獣人から奪ったというガンメンを。
グレンラガンを。
「あれだな」
何日旅をしただろうか。遠くで土煙を上げている大小さまざまな影。
「、見えるか? あれがグレンラガンだ」
どれだか分からず目を細めている私にそう言い捨て、キタンはキングキタンに乗り込む。
「どうしたキタン!?」
仲間がキタンに声を掛けると、キングキタンが振り返りキタンの声が響く。
「早速ピンチみてえだからよ、俺ぁ一足先に助太刀してくらあ! お前等も後から来い!」
そう言うとキングキタンが飛び出した。
「は俺達と行こう」
ガンメンを持たない仲間達がそう言ってくれて、私は先に行ったキタンやダヤッカを見送る。
怖かった戦いの音がする。金属のぶつかる音、破裂音、怒号。
それらが地響きのように音這いし、遠くの土煙が激しく舞い上がって轟音と共に散った。
そして、それは唐突に現れた。
晴れた土煙の中で遠くに見ても分かった。
赤と黒の装甲の機体、金色の兜飾り、私達も掲げているグレン団のシンボルマーク。二つの顔はダヤッカが言っていた、元々二体を合わせた合体ガンメンの名残だろう。
「…あれが…グレンラガン」
あれに乗るのが、この世界で初めてガンメンを手に入れた『彼』だ。
無茶で無謀な道を突き進んでいた『彼』を、この日初めて見つけたのだ。
その夜。
ダイガンザンを一旦退けた皆は、合流して野営をすることになった。
グレンラガンに乗る『彼』と顔を合わせたのもこの時が初めてだった。