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Invisible world【グレンラガン】

第1章 1部





それは一年とほんの少しだけ昔のお話。
全ての人間が地下で暮らしていたあの時。

私も例に漏れず、暗い地下で日々を過ごしていた。
早くに親を無くし、下ばかり見て暮らす私は陰気な子供だったと思う。
村はそこそこの規模で貧困はしておらず、幸い食い扶持は自分でなんとかなる程度には私も大きかった。
だが、いつも焦燥して何かを求めていた。そんな人間だった。

キタンが現れたのはそんな時だった。
「おいお前等! この中で獣人共に楯突こうという気になっている奴ぁいねぇかあ!?」
獣人ハンターを名乗るキタンは、仲間を集めているという。
人間を追いやる獣人を、共に倒す仲間を。

戦いなんて怖い。自分が傷つくのも傷をつけるのも真っ平だった。
同様に平和主義者とは名ばかりの悪い意味で奥ゆかしい村人達は、私と同じく誰も手を上げる者など居なかった。
「…チッ、腰抜け共め」
キタンが吐き棄てるように悪態をつく。
「お前等は知らねぇだろうがなぁ、お前等みたいな侘しい地下暮らしから飛び出して、獣人の乗るガンメンを奪っちまう奴もいるのによ。いいさ、お前等なんざ一生地下で暮らしてろ」

(…ガンメンを奪う?)
最初に私の興味を引いたのはその言葉だった。
たまに見かける大きい乗り物。それらは全て獣人が操り人間を襲う。その程度の認識。
疑いも持たずに「あれは獣人のもの」と思い込んでいた。
それなのに、その乗り物を奪う。そんな人間がいる。

「…ねえ、その人はどこに居るの?」
「あぁん? なんだこのガキ」
好奇心だったのだろうか。気付いたらキタンの服の裾を引っ張っていた。
キタンも戦いが出来そうな人間を探していると言っていた。私みたいな根暗な子供は対象外だっただろう。
それでも私の沸きあがった気持ちは徐々に上擦っていく。
「貴方に付いて行けば、そのガンメンを奪った人に会える?」
「…ああ。――お前、来るか?」
最初は子供を見る目線で見下ろしていたが(当たり前である)、私の真剣な声音に気付いたのか、キタンは私に向き合ってくれる。

「…行きたい」
「分かった」
村人がざわめく。
あんな子供がと非難の声が上がるが、それらを無視してこくりと頷く私に躊躇う素振りも見せず、キタンが凄みのある顔で笑う。

こうして私はキタンに連れられグレン団の仲間になった。

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