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Invisible world【グレンラガン】

第1章 1部



ニアが提案して、皆で作る公園がもうすぐ完成する。
先日の一件以来、最近はヴィラル率いる獣人達も来ていない。
螺旋王を倒してから、やっと平和が来た気がする。
公園はその象徴。
カミナシティの象徴になるカミナ像はまだ完成には遠いけれど、シモンが一人で作りたいと言っているのだからしょうがない。
それでもこの公園はこの平和になりつつある地上の象徴になるのだろう。


その平和に飽いて、カミナがこの街を出て行くと言う。
正確には「この地上を見たい」と願う彼の希望なのだけれど、カミナシティを出て行く事には変わらない。
今の地上はカミナの願っていた平和な世界に近付いていると思う。
彼が『平和』に安穏と暮らせる人間だとは思っていなかったけれど。
せっかく会えたのに、また離れてしまうのは寂しい、辛い、悲しい。

「…ヨーコなら何て言うのかな」
作業も終わった夜半。後は水を入れるだけの噴水の底を眺めながら、街を去った友人の事を考えた。
自分のやりたいことを見つけて、街を去ったヨーコなら何て言うだろう。

「…やりたい事」
はたと顔を上げた。
「私のやりたい事って、なんだろう」
そのまま空を見上げて思う。宵から更けた群青色の空色がカミナの刺青の色に見えた。

(そうだ、私は自分のやりたい事なんて考えた事も無かったんだ)
気付いてしまった目的の無い人生。
その事実に、恥ずかしさの余り耳が赤くなる。

ずっと後ろを向いて俯いて足を引き摺って、空なんて見上げた事が無かった。
何度も振り返ってカミナの埋葬された丘ばかり思い出してきた。
眠り続ける彼が悲しくて、可哀想で。

そうだ。私はカミナが可哀想、悲しむ皆が可哀想、私が可哀想、とめそめそしているだけだったんだ。
(なんて恥ずかしい…!)
悔しさと恥ずかしさで目端に涙が浮かぶ。

空がカミナの刺青の色をしているなんて事も気付かなかった。
私が立ち止まって涙を落としている間に、ヨーコは、シモンは、皆は自分のやる事を見つけ歩き出している。
(…私のやりたい事)
まだ見つけていない、自分のやるべき事。

「…そういえば」
私がカミナを『好き』と気づいたのはいつだったっけ。
彼を好きな理由は何だっけ。

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