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Invisible world【グレンラガン】

第1章 1部


時が止まってしまった私の頭を掻き混ぜながら、カミナが言葉を続ける。
「この街で見るモンはもう全部見た。のお陰でシモンにも皆にも会えて話せた気がするしな。でもそろそろ俺にはもうここは退屈だ」
「…退屈」
漸く出せた声は掠れていた。
「前にも話したな。俺は世界が見たい。この足で歩いてこの目で全部見てェ。俺がいつまでこんな風に居られるかわかんねェしな」
掠れてしまっていた私の声と裏腹に、カミナの声は底無しに明るい。

「まだ時間はあると思う。けどよ、限られた時間ならその最後まで使いきりてェ」
「…ジーハ村って、何で?」
「俺の、俺達の一番最初だからだ」
カミナが胸を張る。ジーハ村はカミナとシモンの故郷だ。
「俺とシモンはジーハ村から旅立った。じゃあ今度もジーハ村から始めてみようか、と思ったんだよ」
「……」

返事は出来なかった。
カミナが行ってしまう。居なくなってしまう。
彼は最初から「世界が見たい」と言っていたではないか。それを見送らずにどうする。
でも。

俯いてしまう私の顔をカミナが覗き込んだ。
「、お前も行こうぜ」
「…!!」
「この前言っただろ。どこまでも続く地上を一緒に見に行こうぜ!」
「……っ」

胸を衝かれた。
そうだ、そうだった。カミナは誘ってくれたのだ。
このまま頷けば、カミナと共に世界のどこまでも旅をする事が出来る。
カミナと二人で、どこまでも。
それはなんて素晴らしい事だろうか!

「…カミナ」
「おう何だ!」
口角を上げて笑うカミナを上目で見上げた。
「…考えさせて。公園が完成したら…答える」
「ああ。お前の仕事が終わったら返事を聞かせろ。いいな?」
「…うん」
笑顔のカミナに乱暴に髪の毛をがしがしと撫でられ顔を寄せられる。
心地良い重みにうっとりとしながら、私は目を閉じた。



すぐに「付いて行く」と返事が出来なかったのは何故だろう。
この時はその理由は分からなかった。

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