第1章 1部
「なんでやらねェんだ? 政府ってヤツを」
ロシウと交わした会話を思い出していると、カミナが問い掛けてきた。
「ロシウにも言ったけど、私は向いてないから。それよりも普通にこの街で生きて行きたい」
「……」
私の答えにカミナは返事をしなかった。
「そんな事よりもカミナは今日は何してたの? 何かあった?」
ベンチに腰掛けたまま、カミナの顔を覗き込む。私の勢いにカミナが苦笑いする。
「シモンが作ってる像を見てた。しっかし暇過ぎて欠伸が出らァ」
やる事無ェってのは退屈だな、とカミナが頭を掻いた。
「じゃあ今度の私の休みにどこか行ってみようか」
そう言い目を輝かせているであろう私に再び苦笑いして、カミナは私の頭をぽんと叩いた。
「…なあ」
「…カミナ?」
合わせた目が真剣味を帯びている。急に呼ばれた自分の名前に動揺した。
赤い虹彩の瞳が私を見つめ、一瞬逸らし、また真っ直ぐ見つめる。
「、頼みがある」
「…何? 私に出来る事なら何でもするよ」
それは本当だ。カミナにしてあげられる事ならなんでもしてあげたい。多少の無茶なら道理を蹴飛ばしてやってみせる。
しかし私の想像を飛び越して、カミナの言葉には虚を衝かれた。
「俺をジーハ村まで送ってくれ」
「…えっ…?」
「俺は旅に出る」
「!!」
そのまま息が止まった。