第1章 1部
ヨーコが旅立ち、幾日かが過ぎた。
仕事に行き、作業して一日が経ち、帰る。
カミナは日中はどこに居るのか、街中を色々と見て回っているらしい。
時々作業をしている私に向かって手を振っていたりもするし、カミナ像を作るシモンを見上げているのも見かけた事がある。
カミナシティ中央。デカブツ跡地に公園を作ろうと言ったのはニアだった。
人と獣人との戦いを忘れてはいけない。
だから皆がいつまでも覚えていられるように、跡地を残そうとシモンに言ったのがはじまりだった。
賛同したシモンや私によって公園の計画は進み、整備を終えつつある。シモンが作るカミナ像の完成はまだ先になるが、公園自体はもうすぐ完成を迎えていた。
「…もうすぐ完成するんだ」
「こんなでかい公園作っちまうなんてすげえなあ」
夜も更けた頃、作りかけの公園に設置されたベンチに二つの影があった。端から見たらひとつしか見えない影。
「うん、皆で頑張ったから」
まだペンキの匂いの残るベンチに腰掛け、私は隣のカミナに笑いかけた。
昼間の作業は好きだ。身体を動かしていると気持ちも良いし何も考えなくていい。
以前の私は公園整備の仕事が終わるとそのまま帰宅して眠り、翌日また作業を始めるという、自宅と公園の往復しかしていなかった。
だけれども今は帰宅してカミナと食事を取り、夜にまた二人で散歩に行く新しい習慣が出来ていた。
そしてそれぞれ昼間にあった出来事を話す。整備中の公園は人気が少なく、カミナとゆっくり話すことが出来た。
「今日はねロシウが来たよ」
「デコ助が?」
「うん。新政府を手伝わないかって誘われた」
「へえ。やるのか?」
「やらないよ」
感嘆したカミナに笑いかけ、ゆっくり首を振った。
「――さん、あなたも新政府に参加していただけないでしょうか」
ロシウが訪ねて来て懇願されたが笑って首を振った。
「私は向いてないよ。ただの一市民として居させて貰えればそれで」
あのひとの願った通り、笑顔で太陽の下に居れればそれだけで。
「…あなたはヨーコさんと同じなんですね」
溜め息を吐いてロシウが去るのを見送った。