第1章 1部
「あいつも元気そうだな」
…と、もう一人。
「大分ね。カミナが死んじゃったときは大変だったよ」
「…そうか」
私の横で腕を組むカミナが小さく呟いた。
「…ほんとにヨーコにも見えないみたいだったね…」
「だろ?」
私が肩を落とすと横でカミナが「どうだ」と言わんばかりに鼻を鳴らした。
「なんでカミナが威張るの」
呆れて振り返ると、肝心のカミナは部屋のあちこちを覗いている。
「やだ何してんの!!」
「へー、お前の部屋こんなんなのか」
「ちょっと! 引き出し開けないで!」
「なんだこりゃ……ぱんつ?」
「!!!??? 何やってんだこらーーー!!!!!!」
すぱこーん! とカミナを引っ叩いた。
「痛ェ!! なんだよ! 一年経ったって乱暴な所は全然変ってねェじゃねェか」
「お生憎さま。カミナの馬鹿さには敵いません」
「んだと!」
どたどたと部屋を走る。カミナと二人で馬鹿騒ぎをする。
(…私、幽霊殴っちゃった)
そしてそれよりも。
(カミナが、帰って来た)
幽霊だけど、私にしか見えないみたいだけれども。
(カミナが…!)
喩えこれが幽霊でも幻でも妄想でも。
(…!!!)
今はもう、私の心の穴を塞いでくれるのは、彼しかいないのだ。