第1章 1部
「…幽霊?」
「そーゆーモンみてぇなんだよな、どうやら」
幻覚かと思った。恋しさの余り見た幻かと。
驚愕の再会に「何でカミナ? 生きてたの!?」と詰め寄ったがその幻覚もどきは冷静に返して来る。
「…お前驚かねェの?」
「驚いてるよ!! でもそれより質問! 答えて!!」
「分かった分かった」
私の剣幕に肩を竦め、彼は頭を掻いている。
「…っ」
その姿が以前の彼のままで、泣きそうになった。
幻などでは無い。そして一瞬偽物を疑ったが、これはやはり彼だ。
間違いなくカミナだ。
「俺は確かに死んだ。そうだよな?」
「…うん、皆で確認してそこに…埋めた」
カミナが花束で一杯の其処を指差す。長刀とマント。僅かに盛り上がった土。
「もう一年も前になるよ…」
「そうか、そんなに経つのか」
あのオヤジとの闘いは、とカミナが呟く。
「でも…こんなにはっきり見えてるのに、信じられない」
「何人かここに来たけどよ、全員俺が見えて無かったみてェなんだよな」
「でもでも…触れるのに」
そっとカミナの腕に触れる。それは生きている時と変わらない感触。
「不思議だな、それも今の所お前だけらしいぜ」
(…こんなに暖かいのに)
「声は?」
「俺の声もお前にだけだと思う」
「私の声も普通に聞こえる?」
「ああ。音も声も普通だ。流石に頭ン中の事まではわかんねェけどな」
幽霊の癖に人間みてェだと、カミナが笑った。
(…良かった)
私はこっそり溜め息を吐く。良かった、さっきの祈りが聞こえて無くて。
(カミナが好き、なんて)
考えて一人顔を赤くした。
「と、とにかく町に行こうよ。大グレン団の皆も居るし。シモンだってヨーコだって」
他に誰か見える人がいるかもしれないじゃない、と声を上げた。
「そうだな、行ってみるか」
そうして私は『英雄の幽霊』を連れて、その名前を司る町に戻ったのだ。