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Invisible world【グレンラガン】

第1章 1部


「なんか急に、あいつが居ないのに気付いちゃったんだよね」
「…え…」
私が振り向くとヨーコは笑っていた。
「そりゃ悲しくないって言ったら嘘になるけど。…私がメソメソ落ち込んでててもこの世界が良くなる訳じゃないし」
「……」
答えられずに俯く私の手をヨーコが握る。
「じゃあどうするか、って考えたんだ。でさ、この前レイテさんとこに赤ちゃん産まれたじゃない?」
「レイテんとこに赤ん坊!?」
カミナがまた驚いていた。そう言えばまだ説明してなかったっけ。
(マッケンさんと結婚したんだよ)
「マッケンと!?」
更にカミナが目を剥いて驚いている。それはそうだろう。

「そうそう! 可愛いよね」
赤ん坊が好きなのか、ヨーコは思い出すかのように目を細めている。
「ねえ」
「なに?」
きゃっきゃと姦しく、この前初めて見せて貰った赤ん坊の話をする戦友を微笑ましく見ていると、急に真剣な顔をして名を呼ばれた。

「私さ、子供に関わる事をしようと思うんだ」
「子供?」
きょとんと私が首を傾げるとカミナも同じ様に傾げていた。
「そう、子供」
ヨーコが豊かな胸をどんと張る。
「まだ具体的にどんな事かは決めてないけど…、地下を知らない子供達に、私が何かをしたいんだ」
だから勉強も始めたんだ! とヨーコは更に胸を張る。
人生の向きを決めかけているヨーコがとても眩しい。

何をやるか決めたら言うね、と戦友が手を振った。その顔が本物の向日葵のように見える。
「ねえヨーコ!」
立ち去りかけているヨーコに、私は声を上げた。
「なあにー!」
離れていく向日葵が大声で返事をする。
「ヨーコはカミナの事が好きー!?」
「お前何言っ…!」
私の質問に隣でカミナが慌てている。だが肝心のヨーコは大きく笑って大声で叫んだ。

「大好きだったよ!」
華やかに笑うヨーコに陰は無かった。



「…お前知ってたのか」
「何の事?」
「とぼけんな。あー…女って怖ェな」
カミナが照れたように自分の髪を掻き混ぜる。
「あのデカ乳女の奴。もう俺の事なぁんとも思ってねェな」
わははとカミナが笑った。
私も笑った。カミナの気持ちなんて何も知らないふりをして。

太陽のような彼がしていた、仄かな恋。
私の与り知らぬ所で、二人が密かに通じ合ってされた約束は守られなかった。…今の所は。
太陽と向日葵の恋は、こうして終わったのだ。
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