第1章 1部
「やっぱり昨日から変よね?」
その目立つ身体を惜し気も無く太陽の下に晒しながら、ヨーコが私に近付いて来た。
「あいつの一周忌なのにお墓に行かなかったり、いきなり一人で行くっていったり、急に仕事休むって言ったり。かと思えば帰って来たらなーんか変だし」
「……ごめん」
まさかカミナが居るとは言えないので言葉少なに黙る。
「謝る事じゃないわよ。…ま、もずっと元気無かったしね。やっぱり…」
あいつの事気にしてる? とヨーコが呟く。
「…あいつって」
「そんなの…カミナに決まってるじゃない」
ヨーコの口から発せられた彼の名前にびくりと身体を固める。隣のカミナの気配も変わった気がしてカミナの顔が見れない。
「はさ、あいつのお墓にお参りしてきたよね。どんな気分になった?」
質問の意味が分からずヨーコの顔を見返した。
「カミナの事。今、どう思ってる?」
「…!」
隣のカミナが驚く気配がした。
「…ヨーコはどうなの?」
我ながら二人に意地悪な質問だと思った。
カミナは相変わらず黙ったまま隣に立つが表情は分からない。
「そうだね…あいつが死んでからさ、もう一年経つんだよね」
実感湧かないなあ、とヨーコは空を仰いだ。つられて空を見上げる。真っ青な空色。カミナの背中みたいに大きな青空。
「私さ…あいつの事、好きだったんだよね」
その空を見上げながらヨーコがぽつりと呟いた。
「…うん、知ってる」
「はあ!?」
カミナが初めて声を上げ、私の顔を見た。それを見たら何だか可笑しくなって笑みが零れる。
「ちょっと何笑ってんのよ」
勘違いしたヨーコが口を尖らせた。
「ごめん、だってそんなの皆知ってるよ」
「あー…やっぱ知ってたかあ」
「だってヨーコの態度、バレバレだもん」
堪えきれず笑い声が上げた。隣のカミナも「何だよそれ、参るな」と頭を掻いているのがやっぱり可笑しい。
「やだなあもう。シモンはこの事知ってるけどさ」
「そうなのか!?」
照れて笑うヨーコにカミナが驚いている。私の顔も見るが(さあ、私は知らなかったよ)と囁く。
「…でさ、もう一年経つよね。私はこの前一周忌でシモン達と一緒にあそこに行ったけど」
お墓とは言わずに、カミナの眠る場所を喩えた。
「一年経つ実感は相変わらず湧かなかったんだけど」
「…うん」
私は行けずにいた一周忌。