第1章 1部
「寒くねェか? 寝れるか?」
(違っ! 違う意味で眠れ無いようううううう!!)
硬直した私を気遣う訳でも無く、さりとて欲望のまま襲い掛かってくる訳でも無く、私の肩を優しくぽんと叩く。
「昔、シモンの奴がなかなか寝れねェって時にな。こうして一緒に寝たモンだ」
「…シモンが」
それを聞いて私は漸く体の力を抜いた。
いかがわしい理由でなく、カミナは心配してこうしてくれているのが分かった。
あのシモンと並べたような気もするのがちょっと嬉しい。
「お前体温高ェな」
…それはどきどきしているからです。
「安心しろよ。悪い夢見ても俺が夢ン中まで行ってなんとかしてやるよ」
頭を上げろと言うので僅かに持ち上げると、そこに腕を差し込んで来る。
どうやら腕枕らしい。また恥ずかしくなるが大人しくカミナの腕に頭を乗せた。
「…カミナが夢まで来て助けてくれるの?」
「何せ俺様は幽霊だからな。きっと行けらァ」
「…うん」
どきどきもしている。仄かな恋心も勿論有る。
でもそれ以上に、なんて安心出来るのであろう。
(カミナが居る)
しばらくして背中から聞こえて来た寝息と微かな鼾に、安心感とほんの少しの残念さを覚え、私は再び眠りに落ちて行った。
カミナという守護がある。
当然、悪夢は見なかった。
私は一年ぶりに、ぐっすりと朝まで眠れたのだ。