第1章 1部
「そうか。安心しろ、それは夢だ」
べそをかきながら小刻みに震える私を、カミナがぽんぽんと頭を軽く叩いて撫でてくれた。
そこでようやく私はカミナに抱きついている事に気付く。
「…っごめん! 寝惚けてた!」
「いいさ」
夜の闇の中でカミナが笑う。その笑顔に安心して大きく息を吐いた。
…居る、大丈夫。彼は居る。こんなに目の前に現れてくれた。
「ごめん、いつもの事だから。起こしちゃった? ごめん…」
「いつものって。ひょっとしてお前、毎晩こんなに魘されてるのか?」
しまった、という顔をしたが遅かった。気色ばむカミナに私は慌てて言った。
「どうも最近夢見が悪くて。でももう大丈夫。ごめん、寝よう」
訝しげなカミナに向かって手を振る。もう一度寝ようと肌蹴ていた布団に手を掛けた。心配かけちゃいけない。寝なくては。
腕組みをしてその私の言葉を聞いていたカミナが、ぽんと膝を打つ。
「…分かった、こっち来い」
「?」
きょとんと首を傾げた。
「一緒に寝てやるよ」
布団を引き上げる手が止まる。今、何て言った?
「ほれ、来い」
カミナが手招きをする。漸く頭が理解し言葉を咀嚼した。…いっしょに、ねる?
「え!? いい! 大丈夫だから!!」
「うるせェさっさと来い」
慌てて潜り込む私の布団を引っぺがし、あろう事か私は小脇に抱えられた。
「やっやだああ! 助けて!!」
「何もしねェよ」
「じゃあせめて荷物みたいに扱うのやめてええ!」
「ごちゃごちゃうるせェな」
そのまま私をぽいっと床に転がし、その上に毛布を掛ける。いきなりの事に固まる私の頭を撫で、横向きで身体を丸めていた私の後ろに潜り込んだ。
後ろから抱き締められる体勢になり、私はさらに固まった。
(何もしないって言ってたけど…この格好は…っ!! と言うよりカミナとならどうなっちゃっても良いけども…ここここ心の準備ががががが!!!)