第1章 1部
本当に長い一日だった。
「じゃあ寝ようか」
カミナ用に私の毛布を進呈する。敷布団と掛け布団は辞退されてしまったので、せめてこれをとカミナに押し付けたのだ。
「おやすみ」
「おう、おやすみ」
私はベッド。カミナは壁際で頬杖を突きながら眠る体勢になっている。
小声で挨拶を交わし、電灯を消した。
カミナと同じ部屋で眠るという事にどきどきしない訳では無かった。
でもすぐに壁際から聞こえて来た鼾に苦笑し、ゆるゆると来た睡魔に身を任せる。
(おやすみなさい)
――カミナ。
疲労感からか、その晩は浅い眠りだった。
というよりも、この一年間ずっと眠りは浅かった。
浅い睡眠は続けて夢を見る。その内容の殆どがどうしようもなく、行き詰って悲しい夢だった。
「――おい! っ!?」
「…う」
はじめは夢の続きだと思った。暗闇の中でも分かる赤い瞳が私を見下ろしている。
その色が闇の中でもすぐに分かったからこれは夢だと最初に思った。
「おい! 起きろ!」
「…カミナ」
「なあ、お前ものすげェ魘されてたぜ。大丈夫か?」
揺り起こされて徐々に覚醒する。夢だった。いつもの夢だ。
「――っっ!!」
「っておい、?」
目の前の揺り起こしてくれた人の首に縋り付く。あれは夢なんだ、少なくともこの体温が本物なのだ。
「…、どうした」
「…ゆめっ…、怖い夢見た…」
それはカミナが居なくなる夢。あの一年前以来、毎晩訪れる夢。
あの一年前の雨の日に繰り返し叫んでいる。
雨の中佇むグレンラガンと、その足元に蹲る私。
または状況を変え、相手を変え、時には私がカミナ自身になり、この世界から居なくなる夢。
そうして私は毎朝飛び起き、泣き、絶望する。
悲しい夢。