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黒猫の悪戯

第6章 ノブレス・オブリージュ


騒いだせいで腕の傷口が開いたようで、包帯には赤が滲んでいた。
当然痛い筈の椿だが、涙目で鬼灯をキッと睨んだだけでそれ以上何も言わない。
包帯を変えよと伸ばしたお香の腕も軽くはらった。


「…」

「…まるで野生動物を相手にしているようです」


その意は、近づくと噛みつく。教育に時間がかかる、だ。


「いいですか?あなたの身体はまだ完全に妖怪に馴染んでいない。亡者にも鬼にもなりきれていないんですから、普通に怪我もします。普通の人間に毛が生えたくらいの丈夫さなんですから、気をつけないと」

「…」


まったく話そうとしない椿に対して、鬼灯はため息をつくばかりだ。


「埒が明きませんね…お香さん、どうしてこうなったか教えて頂けますか?」

「え、えぇ…」


椿の様子をうかがいながら、お香は遠慮がちに口を開く。


「身体のこともあるし、椿ちゃんには拷問役はさせてなかったの。やってもらったのは餌役です」

「あぁ、男を引き付けるアレですか…役に立ちました?このじゃじゃ馬が」

「鬼灯様ったら…えぇ、餌役としてはとても役に立ってくれました。それはもううじゃうじゃと…椿ちゃん嫌がってたから、正直座ってるだけだったんだけど、それでも十分だったわ」

「ほう」


鬼灯は腕を組んで考える。
…いやだめだ。今のミイラみたいな状態をみながらではうまく想像できない。
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