第10章 燭台切光忠
その日、燭台切は万屋に買い出しに出ていた。
ふと、出先で聞こえてきた噂話に足が止まる。
内容はこうだ。
西側と南側に面する本丸の審神者が次々と行方不明となっている、そんな内容であった。
刀剣男士だけでは無く、政府までもがその行方を必死に捜している。
燭台切は胸騒ぎを覚えた。
当本丸は東側に面する本丸の一つ。
南側の次は…そう考えると燭台切のこめかみからは嫌な汗が一筋流れ、顎を伝い、滴となって地面に落ちた。
燭台切「早く帰ろう」
燭台切は万屋で足らぬ食材やらを買っては、本丸への帰路に着いた。
暫く歩いていると、漸く本丸が見える位置まで戻った。
不意に、血相を変えた太鼓鐘貞宗が駆け寄ってきた。
太鼓鐘「光っちゃん!!」
燭台切「どうしたの、貞ちゃん。そんなに慌てて…」
太鼓鐘「主が…主が…っ」
息を切らし、必死に何かを訴えようとするも、パニックを起こしているのか上手く話す事が出来ない太鼓鐘。
燭台切は太鼓鐘の肩にそっと手を置き、胸騒ぎでバクバクと鼓動打つ自らの心臓も共に宥める様に、落ち着いた声音で問い掛ける。
燭台切「貞ちゃん、落ち着いて話して。主がどうしたの、何があったんだい?」
太鼓鐘「俺、俺…主を守り…きれなかっ…た……」
燭台切「貞ちゃんっ!!」
燭台切の胸に倒れ込む様に、太鼓鐘は意識を失ってしまった。
見れば、太鼓鐘の背には短刀が突き刺さり、太鼓鐘自慢のマントも白い上着も血で真っ赤に染まってしまっていた。