第1章 次郎太刀
聞きたくない!苦しい、怖い!
まるで子供の様に、がむしゃらに首を振って逃げ出したくなる。
けれど、許されなくて。
主「時間みたい。次郎太刀…大好きよ、私の大切な…」
彼女の言葉は、其処で途切れた。
茜色に染まる空、窓から降り注ぐ茜色の夕陽に目を覚ました。
ゆっくりと上体を起こし、眠っていた彼女を見下ろす。
血の気が無く、青白い彼女の頬に手を伸ばす。
そっと撫でると、彼女の頬は冷たくなっていた。
次郎「………逝っちまったのかい」
静かに呟く次郎太刀の声が、審神者部屋に響く。
次郎「アタシの返事、ちゃんと聞いて行ってくれなきゃ…駄目じゃないのさ」
次郎太刀の右目尻から伝う雫に反し、次郎太刀は笑っていた。
次郎「…好きだよ、大好きさ。アタシはアンタが愛おしくて堪らないよ…」
酒を盃に注ぎ、一気に煽る。
次郎「どうしちまったんだろうねぇ……大好きだった筈なのに、味がしないんだ…っ」
そう言って、次郎太刀は彼女の体を抱いて泣き崩れた。