第7章 愛染国俊
自分と同じ様に空を見上げる彼女は、笑顔を浮かべながら涙を流していた。
その涙が何を示しているのか分かってしまいそうで、愛染は彼女の隣に移動して…彼女の痩せ細った身体を抱き締めた。
愛染「主さん…」
主「…覚えてるかしら?愛染。貴方、私を初めて見た時…こう言ったのよ?」
愛染・主「祭って、行った事あるか?」
それは愛染が内気だった彼女と、何とか仲良くなろうと掛けた言葉だった。
主「嬉しかったぁ…それと同時に、貴方の事が大好きになったの」
流暢に話す口調はまるで、最期の時に備え後悔の無い様に話している様にさえ見えた。
主「好き……貴方の事が大好き……ずっと、一緒に居た…」
言い掛けるも静かに首を振って彼女は言い直す。
主「ずっとずっと…貴方が好きよ、愛染」
彼女が言い終えた瞬間、大輪の花が空に咲く。火花を散らして咲くその姿はあまりにも美しく、散る姿が彼女に重なる程に儚い…そう愛染の目には映った。
不意に彼女の身体が愛染へと凭れ掛かる。力無くだらりと掛かる体重に、愛染は彼女の身体を力いっぱい抱き締めた。
愛染「主さん、俺だって…ずっとずっと好きだったんだ」
その固く閉じられた瞼に口付けを落とした後、眉根を寄せて寂しげに彼女の顔を見下ろす。
そして愛しい存在の死を受け入れて肩を震わせるその背中に、明石と蛍丸は表情を曇らせ顔を背けた。