第7章 愛染国俊
愛染「あっ…き、気を付けてくれよ?蛍」
蛍丸「大丈夫だよ…っと」
心配する愛染を余所に、蛍丸はいつもの調子で返し彼女をそっと車椅子に下ろす。
主「……蛍丸に…明石…一体、どうしたというの……?」
最近の彼女は肺に送り込む酸素量が明らかに減り、呼吸をするだけでも苦しげに肩で息をする程の衰え様だった。
言葉も途切れ途切れに彼女は問い掛ける。
明石「祭、愛染国俊の提案なんですわ」
蛍丸「どうしても主と一緒に祭に行きたいんだって、一昨日皆に頼み込んで来てさ…まあほら、俺達もお祭りなんて行った事無いしね。丁度良いじゃんって話になってさ」
愛染「皆が手伝ってくれて、祭を…やろうって事になったんだ」
明石の足らぬ説明に蛍丸が詳しく説明を加え、少し照れくさそうに頬を掻いて目を逸らす愛染。
三振りの優しくて不器用な言葉に、審神者は老いて皺が刻まれた顔を涙で濡らした。
その様子を片方の眉を下げて優しく見詰める愛染、そんな愛染を見ては穏やかに…けれど何処か辛そうに見詰める明石と蛍丸。
そんな二振りの表情はまるで、彼女の最期を知っているかの様で…。