第6章 小夜左文字
何時間経っただろうか、静かな空間で小夜は目を覚ました。
自分を抱き締め温めていた筈の腕が、だらりと床に投げ出されていた。
小夜「主…手、冷えるよ」
寝惚け眼で彼女の手を見詰めては、声を掛ける。返事は無い。
きょとんとした表情を浮かべ、彼女の頬にそっと触れた瞬間…小夜は気付いてしまった。
彼女は息をしていなかった。
小夜「…っ」
唇を噛み、起き上がると彼女の冷たくなった手を握り自らの頬に添える…まるで彼女が自分の頬に触れているかの様に。
目にいっぱい涙を溜め、小夜は笑った。
小夜「主………お疲れ様」
その言葉はどんな言葉よりも淡々としており、どんな想いよりも深い愛情が込められていた。