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審神者が死んだ日

第5章 和泉守兼定





普段通りな様で、叫び出したいのを堪えている様な絞り出した様な声だった。



堀川「……うん」



その言葉に、堀川は一つ頷いて部屋へと戻って行った。

堀川が行った後、和泉守は畳を殴りつけた。



和泉守「また…俺は主の死に目にあえなかったのかよ…っ!」



悔しさを吐き出す様に、静かに畳を見詰める。
彼女を見ては、自然とその頬に手が伸びて再び頬を撫でる。



和泉守「そっか、間に合わなかったか…」



涙を溜めた笑顔を浮かべ、悔しさのこもった言葉をぽつりと呟く。

彼女が年老いてからも、和泉守は変わらず彼女を愛していた。
口付けを交わし、彼女を腕に抱いて、そしてその小さくなっていく確かな存在を感じていた。

冷たくなり、硬直してしまったその体を抱き上げて彼女の額、頬、唇へと口付けを落としていく。
自らの愛情を刻み込む様に…。



和泉守「すまねぇ…最後に、寂しい思いをさせちまった」



死んでしまった亡骸をまるで生きている人を抱き締める様に抱いて、彼女の髪に鼻先を埋める。



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