第5章 和泉守兼定
本丸に帰還して早々、和泉守はまるで走っているかの様な早足で審神者部屋に向かった。
へし切長谷部の話を聞きもせずに…。
和泉守「よお、主殿!格好良くて強ぉぉい…最近流行りの刀の俺が、今帰還したぜ?」
相も変わらず、彼女は床に伏せっていた。
顔に、真っ白な布を掛けて。
ぞくっ、と和泉守の全身を冷やす様な嫌な予感が過る。
和泉守「主殿は…ドッキリか何かか?全く、俺は引っ掛からないぜ…っ!?」
ずかずかと歩み寄り、顔に掛かった布を取る。
目に飛び込んで来たのは、血色が失せた青白い顔。
恐る恐る彼女の頬に触れてみると、彼女の温かかった体温は其処には無く…氷の様に冷たくなった彼女だった。
堀川「兼さん…っ、主さん…今朝亡くなったって………」
和泉守「国広…る……てくれ」
長谷部から説明を受け、堀川は急いで知らせにやって来た。
慕っている和泉守の反応が、自分には分かってしまったから。
しかし、和泉守は俯いて彼女を見詰めたまま…か細く呟いた。
堀川「…え?」
和泉守「主殿と…二人にしてくれねぇか…?」