第1章 気づいたのは
「きゃー東堂くーん」
スタート前の他校生
「東堂様ー!」
廊下での後輩達
「尽八様ー!」
レース中の同級生
「「尽八君ー頑張ってー!」」
そして体育中の先輩達
(ただの体育だっての)
そう、授業通りに身体を動かしているのにこうも周りから気にかけられる東堂君は我が箱根学園自転車競技部のレギュラーであり、
「任せろ!」
とポーズを取れば
「きゃー」
と黄色い声が返されるとっっっても人気者である。
(今日も今日とて人気者だなぁ)
彼に気づいてもらえてきゃっきゃっとする少女達はとても嬉しそうで、たまに彼に告白しにくる子も居るのを見るとアイドルよりかは手の届く存在ということだろう。
(あんなにモテ男じゃなぁ)
付き合っても自分に自信がないと、迫り来るファン達への心配で気が気でないだろう。
そう思いながら校庭で騒がれている東堂を眺めながら名は日誌をとじ、職員室に寄って玄関に向かう。
(まだやってる)
部活は良いのだろうかと歩いていると誰かにあたってしまい
「す、すみませっ・・・・」
と視界の先には見馴れたジャージ
「大丈夫?」
と優しい声は
「新開君・・・」
と同じくイケメンで有名な人気者の新開君だった。
「名も尽八ファンだったとは」
そう言う新開に否定すると
「尽八追って前見てなかったのに?」
と笑われてしまう。
「ああも周りからきゃーきゃー言われてたら気にならない?」
そう訊ねると、そうでもないと言った顔の新開に慣れとは恐ろしいものだと染々した。すると東堂がこちらに気づき近づいてきて
「名!今帰りか?気をつけて帰るんだぞ。女子1人は心配だがなにせ今は部活中。しかも俺はレギュラーだ!練習中は抜けら・・・」
「分かった。大丈夫!大丈夫だから部活に行って」
後ろの方でひそひそと話しているファン達が恐ろしい。
「そうだな、ではそうしよう!行くぞ新開!!」
((待ってたのはこっちの方・・・))
同じ気持ちだった新開と笑いあい
「じゃっ!」
「はーい。頑張ってー」
と先に行く東堂の速さと、たった少し出遅れただけでも追い付く新開の速さに驚きながら二人を見送った。