第3章 【救国の忠騎士】救国の忠騎士
言うやいなやイザベラは、シルフに霊薬を使った。シルフの力がみるみると増幅していくのを肌で感じる。
「これが…星晶獣の力…」
「こわいか?」
ジークフリートに問われ、サフィアは「まさか!」と声を張り上げた。
「私は騎士です!前線に出してもらえなくても、騎士団の皆と戦えなくても、ずっと戦ってきた!腕は衰えてませんし度胸だって負けません!」
「よし、その意気だ。行くぞ!」
「はいっ!」
ジークフリートの号の下、一同は一斉にシルフへ向かって駆けだした。
黒竜騎士団団長ジークフリートと副団長だったランスロット。二人の連携は不思議と衰えていなかった。彼らが斬り込む中に、ヴェインやサフィアが手を加えてゆく。傷つけばソフィアが癒し、グランは警戒しつつルリアを護った。だがほんの少しの隙をついて、イザベラ配下の兵がルリアへと襲い掛かる。
「きゃあっ!」
悲鳴に気づいた時にはグランは別の者に応戦しており対応が間に合わない。
「ルリアっ!」
グランは目を瞠った。だがしかし、大きな雷鳴のような音がしたかと思えば、兵士の動きはぴたりと止まっていた。そしてそのままぐらりと倒れる。
「え…?」
「怪我は無いわね!次!」
「あっ…あぁ!」
サフィアの左手には小銃が握られていた。右に剣を、左に小銃を手にしたまま、サフィアはすぐさまシルフへ踵を返す。元々パワータイプでないシルフは、守りに徹していても騎士達の猛攻撃に徐々に押されていった。そしてその身を護っていたシールドが、ついにパキンと音を立てて崩れ去る。
「これで終わりだあぁぁぁ!!ヴァイス・フリューゲル!!」
ランスロットの覚悟の一撃がシルフを捉え、彼女はやがて力を失い頭を垂れた。
「ぐっ…」
「ごめんねシルフちゃん…あなたの力をわけてもらいます」
ルリアが力を解放し、シルフの力を吸収していく。
「すまない…ルリ…ア……忘れ、ないで…」
消えかけながら、シルフは寂しそうに声を絞り出した。シルフの姿が完全に消え去ると、イザベラが大きな唸り声を上げる。
「くっそぉお!馬鹿な!私のシルフが!こんな事がァ!?」
「観念するんだな。貴様はもう、終わりだ」
「イザベラ…。にわかには信じ難いが…今、この場で起きた事を見れば貴様の罪は明白だ」
追い詰められたイザベラとその関係者は捕らえられ、城の地下牢へと幽閉される事となった。
