第16章 潜入、白鳥沢学園2日目〜仲直りの先〜
教室に着くまで、私達の間に流れる空気は気まずくて、終始無言だった。
しかもそれは、教室に着いて授業を受けている時も続いていた。
「…………」
先生の話をちゃんと聞かなくてはいけないと分かっているけど、先生の言葉は右耳から左耳へ流れていく。頭の中を占めているのは、もっぱら工の事だ。……黒鷲の事は、頭からすり抜けていた。
チラリとまた気付かれないように、隣に座っている工を見る。午前中、痛いほど視線を感じていたのに、今は俯いていてそれを感じる事はなくなった。……その事については困っていたからよかったと思う筈なのに、何故か私は寂しいと思ってしまっていた。
「……!」
自分の気持ちに心の中で首を傾げた時、工の両手に私が書いた置き手紙が握られている事に気付いた。強く握っているのか、その紙は皺くちゃになっている。
(工……)
今彼は、何を思って置き手紙を見つめているのか。
知りたいけど、今の私に聞く勇気は持ち合わせていなかった。
『どこに行ってたんだ!!』
「っ……」
またあんな風になってしまうのではないかと思い、それが怖かったからだ。
キーンコーンカーンコーン。
授業終了のチャイムが鳴り先生が帰った後、各々が伸びをしたり友達と雑談したりと緩い空気が流れ始める。でも、私達の間の空気はそれとは真逆だった。
『……俺達は放課後になるまで見てやれないが、なるべく休み時間を使ってちゃんと話し合っておくんだぞ』
頭の中に流れるのは、昼休みが終わった直後に言われた獅音さんの言葉。
(……ちゃんと、工と話し合わなくちゃ)
話しかけるのは、正直言ってまだ怖い。でも、工とずっとこのままなのは嫌だ。
それに今思えば、工は置き手紙の存在に気付いていなかった反応をしていた。だから、私に怒鳴ってしまった手前、話しかけづらいのかもしれない。
(だったら、私から話しかけなきゃ……!)
机の下にある手をギュッと握り締め、自分を鼓舞する。怖いという感情は薄れていき、どんどん勇気が湧いてきた。
幸い、工は次の授業に使う教科書などを机の上に出している。