第3章 私の今の日常
「う、ん……」
スッと目を開けると、先程までいた少年……工の姿はなく、いつもの私の寝床が映る。それを見て、自分は今の今まで寝ていて、先程の出来事が夢だと気付いた。
懐かしい夢を見たなぁ、と思いながら翼を広げて伸ばし、顔を上げて空を見上げる。そしたら太陽が少し出ていて、私は思わずギョッとした。
「大変!早く行かなきゃ!」
バサリと勢いよく翼を広げ、翼の動きと風の力で私は綺麗な青い空へと舞い上がる。目的地はもちろん、あそこ。
周りのと比べると、一際大きい建築物。相変わらず綺麗で壮観だなと思いながらそこを通り過ぎ、先程の物よりかは小さいけどそれでも大きい建物が私の目的地だ。
その建物のひとつの窓に近づき覗くと、出会った頃より随分と成長した工が気持ちよさそうに寝ていた。でも変わらないものもある。ひとつは髪型。あの頃と変わらず綺麗に切り揃えられた前髪が、寝返りを打つ度にサラサラ揺れている。あのキューティクルをどうやって維持しているのか、実に気になるところである。そしてもうひとつは、今でも優しい男の子である事だ。
「……て、物思いに耽っている場合じゃない。工を起こさなきゃ」
今の私の朝の日課は、工が『朝練』というものに遅れないように起こす事だ。工は『バレーボール』という球技が大好きで、この『白鳥沢学園』の『バレーボール部』に所属している。そのバレーボール部には朝練があり、もちろんそこに所属している工も行かなければならない。
なのにご覧の通り、今は気持ちよく寝ているところです。私的にはこのまま寝かせてあげたいけど、そういかないのが現実なわけで。私は窓が傷つかないよう、でも少し強めにくちばしで叩く。何回か繰り返していると、工が身じろぎしてまだ眠たそうに目を開けた。そして徐ろに近くにある『スマホ』を手に取って画面を見つめた瞬間、工の瞳が驚きで見開かれた。
それを見届けてから、私は来た時と同様に翼と風で空へと舞い上がる。後ろからはくぐもった工の叫び声と大きい物音が聞こえてきて、思わず笑ってしまった。さあ、私の役目はこれで終わりだ。