第12章 潜入、白鳥沢学園1日目〜人の優しさ〜
「ここが、今日から1週間お前が使う部屋だ。もし何か入り用があったら言え」
「はい。ありがとうございます、鍛治さん」
あれから滞りなく部活は終わり、私の初めてのマネージャー業は無事に終了した。特にみなさんの迷惑にはならなかったので、本当によかったと思う。
今は寮に着き、私が1週間使う部屋に案内されたところだ。
鍛治さんにお礼を言って中へと入る。部屋は綺麗に整頓されていて、ベッドや机など必要なものは用意されていた。
(これだけあるなら大丈夫かな)
1週間しかここにいれないのだから、と思ったら、何だか寂しい気持ちが湧き上がってきた。その事に気付き、私は慌てて首を横に振る。
(まだ始まったばかりなんだから、くよくよしてる場合じゃない!)
それに、私にとって本番は明日からなのだ。大婆さまから与えられた黒鷲さがし。今ここにいるのは、そのためなのだから!
グッと拳を握って気合を入れていると、コンコンと部屋のドアがノックされた。どうやら、誰かが来たみたいだ。
持ったままだった荷物を床に置き、「はい」と返事をしながらドアに近づき開ける。開けた先には、ラフな格好をした工が立っていた。
「工!?」
「白鷲、さっき振り」
「さ、さっき振りです……」
驚く私に対して、工はいつも通り笑いながら話しかけてきた。……工の姿を見ると、嫌でも思い出す、あの出来事。
『名前で、いい。……そっちの方が、何だか耳に馴染む』
『顔真っ赤。……かわいい』
(うあああああ……!)
自分の意思とは関係なしに心臓が脈打つ。あの時よりかは弱いとはいえ、やはりこの感覚は慣れなくて妙にそわそわしてしまう。
そんな不可解な事が私に起きているなど露知らず、工は変わらずいつも通りに話しかけてきた。
「白鷲はまだ制服着てるんだな!」
「あ、はい。これから着替えようとしていたところだったのです」
「そっか。なら部屋の前で待ってるから、一緒に食堂に行かない?」
「食堂、ですか?」
「うん。もうすぐ夕飯の時間だから」
「夕飯……!」
工からもうすぐ夕飯の時間だと告げられ、思わずお腹が鳴ってしまうのが分かった。ハッとなって咄嗟にお腹を押さえるけど、どうやら工にも聞こえていたみたいで小さく笑われてしまった。