第11章 潜入、白鳥沢学園1日目〜初めての感覚〜
小話
「…………」
川西はボールを構え、コートの向こう側にあるペットボトルを見据える。自分が今立っている場所は、試合中のエンドラインだと頭の中でイメージしながら。
––––狙うは、サイドラインギリギリにあるペットボトル。
ふう、と息を吐き出し、ふわりとボールを上に上げる。そして、ボールがちょうどいいところで落ちてくるタイミングを狙って、ドスッとサーブをした。
ボールは低い放物線を描き、段々とペットボトルに近づいていく。そしてボールが当たり、カランと音を立ててペットボトルが倒れた。
「よし……!」
その事実に川西はグッとガッツポーズをし、いつもはあまり動かない表情筋を崩して喜んだ。
「ナイッサーです!川西さん!」
「!」
すると、少し遠くからそんな褒め言葉が聞こえてきて、驚いた川西はそちらに顔を向ける。そしたら、白鷲が笑顔で川西を見ていた。だが白鷲は手に持っていたノートに目を移し、何かを書き始めたため、視線はすぐに外れた。きっと先程の成功をノートに記録しているのだろう。だが川西は、呆けたまま白鷲をじっと見続ける。白鷲の膝を枕に横になっている五色が目に入らないくらいに。その事に気付いた白布が、怪訝そうな顔をしながら川西の肩を叩いた。
「おい太一。どうした?」
「っ、…あ、ごめん。すぐどく」
「……白鷲がどうかした?」
「え。……いや、いいなと思って」
「?いいって?」
「サーブが成功した時、褒めてもらえるのって」
「?」
川西の言いたい事がよく理解出来ず、白布は首を傾げる。今までも練習中、自分や先輩達から褒められた事が何度もあるのに、今更何を言うのだろうか。
そんな白布の疑問に川西は気付いて説明しようとするが、上手い言葉が見つからずしどろもどろになる。その間に、サーブ練習をしていない事が鷲匠監督に見つかり怒鳴られてしまった。
「ごめん、白布!」
「いや、平気」
駆け足で列に戻って行く川西を見送り、白布はエンドラインに立つ。そしていつも通りボールを構え、サーブをする。
ボールは低い放物線を描き、段々とペットボトルに近づいていき、カランと音を立ててペットボトルが倒れた。
「よし」
「ナイッサーです!白布さん!」
「!…………」
川西の言いたい事が、何となく分かった白布であった。
