第6章 黒鷲
「……とにかく、黒鷲については分かった。じゃあ、何で尼袮はその生徒が黒鷲の妖怪だと思ったんだ?奴らが人間になれる能力を持っているだけで、そう判断した訳じゃないんだろ?」
今まで静かに見守っていた鍛治さんが、腕を組みながら大婆さまにそう聞いた。その質問にもちろんだと言うように頷き、大婆さまは改めて私に視線を向けて翼を動かし、自分の目を指差した。
「その生徒の瞳の色は、『赤色』だったのだろう?」
「は、はい……」
今でも鮮明に思い出せる。まるで血の様な、赤色の瞳。
「黒鷲の特徴は、漆黒の羽と……血の様な赤色の瞳だからだ」
「「!?」」
私と鍛治さんが同時に息をのんだ。もしそれが本当なら、大婆さまの言う通りあの生徒はほぼ間違いなく黒鷲と言えるのだから。
「失礼な。本当に決まっているだろう」
「あ……ご、ごめんなさい」
大婆さまがひとつ息を吐き出すと、突然大婆さまの体が光り出した。眩い光は社や私達を照らし、やがてゆっくりと薄くなっていき完全に消えたら、そこには鍛治さんぐらいの年齢のお婆さんが立っていた。
この姿が、人間になった時の大婆さまの姿だ。私はもう見慣れているから、今更驚きはしない。
(けど……)
チラリ、と気付かれない様に横目で鍛治さんを見る。別段変わったところが見られないという事は、彼にとっても見慣れている光景なのだと言える。
……すっかり聞くタイミングを逃してしまったけど、大婆さまと鍛治さんの関係は何なのだろうか。二人の会話を聞くに、昨日今日に出会ったとは言えない親しさがある。
(ま、まさか……恋人同士!?)
妖怪と人間という種族を超えた、禁断の関係なのだろうか。色々と想像するだけで胸がドキドキしてくる。
「……、…白、真白!!」
「っ、は、はい!!」
「やっと気付いたか。何度呼んでも反応しなくて驚いた」
「す、すみません!大婆さま!」
いけないいけない。危うく自分の世界に入るところだった。大婆さま、ありがとうございます。
気持ちを切り替えるためにゴホン、と咳払いをしてから改めて大婆さまに視線を向けると、5枚のお札を私に差し出していた。
「?大婆さま、このお札は?」
「…妖怪を封じるお札だ」
「!?……な、何故このお札を私に……」
「お前に、黒鷲の封印の任を与えるからだ」
「…………………え」