第18章 幕間3
「…………」
「っ……!?」
お面越しに見えた男の瞳に、天孤は身体を固まらせた。何故なら、その瞳は何の色も、感情もなかったからだ。
ただただ冷たい、絶対零度の瞳。
––––違う。
天孤は先程の甘い考えを、瞬時に否定する。
『次は気を付けろ』……『次はないからな』と言外に意味を含ませていたのだ。
「は、はい……!」
少しでも大丈夫だったと安堵した己を恥じ、恐怖で声を震わせながらも天孤は返事をした。その返事に男は頷くと、肩から手を離し立ち上がる。そして顎に手を当て、何か考える素ぶりをしてから言った。
「天孤、お前が我を忘れて怒った理由は想像に難くない。……そこで聞く。どうしてお前は」
「変わらないからです」
言いたい事が分かったのか、天孤は男の質問に被せるように口にした。その堂々とした言葉に男はチラリと視線を向けると、先程の怯えた様子が嘘のように顔を上げ、言葉同様堂々とした天孤の姿があった。
「貴方さまは、貴方さまですから」
「……そうか。……もう下がっていい」
天孤の答えに男は目を閉じると、下がるよう言いつけた。
……何かを期待していた訳ではない、と言ったら嘘になる。
そんな想いを抱きながら、男の素っ気ない返事に天孤は少し寂しげに瞳を揺らした。
「……はい」
だが何かを言うでもなく頭を下げると、来た時同様音もなく天孤は去って行った。
天孤が去り、人気のない静かな夜の中ひとり残された男。
不意に閉じていた目を開けると、腕を上げ虚空に向かって撫でる動作をする。まるで、そこに何かがあるように、愛おしそうに、愛でるように。
「ああ…。早く俺を見つけてくださらないかな……」
–––––白鷲様。
男は、そう興奮が抑えきれない様に呟いた。
赤い瞳を妖しげに輝かせながら。