第16章 潜入、白鳥沢学園2日目〜仲直りの先〜
「!」
とその時、工が私の頭を撫でている獅音さんの手首を掴んで離させた。その顔は少しムッとしていて、怒っているのが分かる。
「つ、工……?」
でも、何故怒っているのか分からない。覚さんならともかく、獅音さんは今までの言動の中で特に怒るような要素は何もなかった筈だ。
(なのにどうして……)
工の行動に疑問を持ち困惑しながら見つめていると、不意に工がハッとした様子を見せて慌てて獅音さんの手首を離した。
「れ、獅音さんすみません…!俺……!」
「落ち着け工。俺なら大丈夫だ」
「で、でも……!」
「それより、工が自分の気持ちに気付いた事が、俺は嬉しいぞ」
(……自分の気持ち?)
はて、獅音さんの言う『自分の気持ち』とは何なのだろうか。
疑問を持つ私とは対照的に、工は分かったのかまたハッとした様子を見せてキリッとした表情で獅音さんを見据えた。
「もしかして、獅音さんはこの胸のモヤモヤが分かるんですか!」
……………
違った。工も分かってはいなかったみたいだ。
視界の隅で、覚さんがお笑い芸人顔負けのスッ転び方をしたのが映った。
「……お子様」
「……まあ、らしいっちゃあらしいんじゃない?」
「確かに、あれでこそ工って感じだな」
「期待を裏切らない男、工。ここに爆誕ってか?」
「……大丈夫か、天童」
「ブフッ…だ、大丈夫…じゃない…!助けて、フ…若利、くん……!」
「……すまない」
「胸がモヤモヤ……もしかして、病気ですか!?」
「ええっ!?そ、そうなんですか、獅音さん!?」
「ま、まあ…ある意味病気、になるなぁ」
「「ええええ!?」」
「い、いや!身体には何の影響もないから大丈夫だぞ!」
この後落ち着くまで、暫く時間がかかった。