第3章 story Ⅲ
「フフ。やれば出来るじゃん。」
「なんだよ、人がせっかく…!もうお前は入れない!」
「ごめん。上がっていくよ。」
浅見は瑞希のおでこに軽くキスをし、運転席へと戻る。エンジンを切り、後部座席に置いてある黒い傘を取ると、素早く車から降りた。助手席側に廻りドアを開けると、瑞希に雨がかからないよう傘をあてる。
「あ、ありがとう。でも、浅見が濡れるぞ?」
「俺は別に平気だよ。鷹が風邪引いた方が大変だ。」
浅見の笑顔に見惚れながらも急いで車から降りると、傘の中は雨足が強いせいで五月蝿く響く。
瑞希の肩を引き寄せ、濡れないようにする浅見の行動に顔を赤らめながら、二人はマンションへと消えていった。