第1章 story Ⅰ
力強くドアを閉め、一気にマンションを出た。道路に出た時には息が上がっていたが、構わず自分の家へと足を進めた。
私が逢いたくなるって…?笑わせるな…!
クソッと小さく言葉を発し、足早に家路に急ぐ。
家に着くと直ぐ様お風呂へと駆け込み、今日の日を忘れようと体を強く洗った。シャワーを頭から浴びるとヒリヒリと皮膚が悲鳴をあげる。
ふと壁鏡に目をやると、艶(なまめ)かしい顔をしている自分と目が合った。その顔は自分でも初めて見る表情だった。
「あ…あいつは…私に何をした…?」
首の赤い痣を触ると、躯を重ねてた時の記憶が蘇り、急に体の力が抜けた。その場にへたり込んだ瑞希はただただ笑うしかなかった。