第1章 ヤドリギの下
18歳の冬。
あの日から1年余りが経っていた。
ナルは相変わらず、イギリスと日本を行ったり来たりの生活を送っている。
好きなことをして充実した毎日を送っているのはうらやましい。
最後にナルにあったのはいつだったっけ。
彼とはいつの間にか疎遠になっていた。
男女の幼馴染なんてそんなものかもしれない。
今日はそんな彼が日本から帰ってくる日だ。
だが生憎大人達の都合が付かず、運転免許を取ったばかりの清が送迎係に指名されてしまった。
私だって暇ではないと思いながらも大好きなルエラの頼みは断れない。
空港に着くとナルが乗っているはずの便はあと30分程で到着するらしい。
もうクリスマスが近いからか空港は混雑している。
ちゃんとナルを見つけられるだろうか。
到着した飛行機の発着口からは雪崩のように人が降りてきた。
家族連れやカップル、キャッキャッと嬉しそうに騒ぐ女性の二人連れ。
「後ろの席の東洋人、超イケメンだったよね!」
「写メ撮りたかったなぁ〜」
間違いない。
どこだ、ナルは?
「…清?」
気配も全くなく待ち人が後ろにいた。
「ルエラが迎えに来ると言っていたが」
「急用が出来たから私が来たの。荷物それだけ?」
ナルが持っているのはボストンバック一つだけだ。
いくらなんでも少な過ぎないか。
「後はオフィスに置いてきた」
またすぐに戻るからか。
その時、少し落ち込んだのは秘密だ。