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ヤドリギ【ゴーストハント】

第1章 ヤドリギの下



渡日の予定は1週間程だった。
夏休みに入ってすぐ、ジーンは日本に発った。


彼にもう会うことが出来ないなんて、そのとき誰が想像しただろうか。




予定の1週間が過ぎた頃、ディヴィス家に悲劇が襲った。

ナルが、ジーンが亡くなるのを透視したというのだ。
当然ジーンとは連絡は取れず、ナルのヴィジョンを信じるしかなかった。


ジーンの遺体が見つかったのはそれから2年後だった。
彼の身体はたくさんの人に惜しまれながら荼毘に付され、魂も永遠の眠りについたのだろう。




葬儀の見送りが終わると、清はぐったりと人目につかない建物の影に座り込んでいた。

ジーンは本当に戻ってきてはくれなかった。
遺体が見つかるまではきっとどこかで生きてるかもって信じてた。

もうあの大好きな笑顔には二度と会えない。
イタズラ好きな憎めない彼。

涙が次から次へと流れる。
息ができない。苦しい。


誰か、誰か。
この絶望の海から引きずり上げて。


そう願っていたとき、頭の上から声がした。

「大丈夫か?」
ジーンにそっくりな、それでいて冷静なジーンではない声。

「ナル……!」

ナルはしゃがみこみ、清と視線を合わせた。
「ナル!私、ジーンが大好きだったの。なのに、なのにッ…!ジーンがいなくなっちゃった!
うぁぁぁん!!」

ナルにしがみついて、大声を上げて泣いた。
まるで幼い子どもみたいに。

彼は清の背中に手を回し、彼女の頭を胸元に付けさせギュッと抱きしめた。
好きなだけ泣いていいというように。

あの日のジーンをなくした悲しみとナルの胸の温かさは、今でも忘れることはできない。




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