第3章 緑玉髄の魂
「箕浦さん、そちらは?」
「あ? こいつのことは……まぁ気にすんな。ただの探偵だ」
「探偵って……」
箕浦の部下であろう制帽がいまいち似合っていない男が、乱歩を見ていぶかしげに眉根を寄せた。その目は映にも向けられ、その絡みつくような視線に、映は震えた。
──なんなの、このひと……。
──こわい。
それは鏡原の屋敷にいたとき、感じていた視線によく似ていた。観察するでもない、かといって見定めているわけでもない。色慾を向けられているでもない。これは。
──こいつ……、普通じゃない……!
「ホトケはこっちだ。なんでもいいが、あんまりべたべた触るんじゃねぇぞ。かばいきれなくなる」
「わかってるよ、うるさいなあ。……映」
かすかに名前を呼ばれ、映ははたと思考の海から這い出る。
「……大丈夫。僕がいるから」
乱歩と目が合った。それだけでよかった。ひとりきりじゃない。そう思うだけで、安心感が倍ちがう。
いまはまだ証拠が少なすぎる。この得体の知れぬ警官に詰め寄ったところでなにが得られるだろうか。
──しっかりするのよ、映!