第2章 閑話
意識を失ってしまった映を抱えて、乱歩は櫻木の屋敷を出た。
あわただしく仲間やら警察車輛やらを呼んだ箕浦を置いてきぼりにして。
「……まったく、重いんだけど。タクシー使ったら経費で落ちるかな……」
──いいや、落とす。
道路わきで止めたタクシーに乗りこんで、『武装探偵社まで』と行き先を告げる。
「大丈夫ですか? 彼女さん、具合悪い?」
「彼女じゃないし、心配いらない」
「それは失礼しました……」
乱歩は自分の膝枕で規則正しい息をしている映を見おろした。
「──ねぇ、映」
運転手に聞こえないように、乱歩は顔を映の耳に寄せて、小声で囁いた。
──僕たち、まるで恋人どうしみたいに見えるんだって。
「僕は、きみがほしい──」
そんな乱歩の囁きを知ってか知らずか、映はかすかにうめいて、身をよじった。