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不羈奔放【戦国BASARA】

第30章 アンタに殺されるなら喜んで瞳を閉じよう【政宗】


暗い闇の中にいるようだった。光の無い空間にただ独り、立ち尽くしている。夢、かな、と不思議と思った。ゆっくり辺りを見渡してみるが、本当に何もない。夢ならとりあえず行動してみるか、と足を動かしてみた。







どれくらい歩いただろうか。不意にツンと鼻につく臭いが漂ってきた。夢なのに嗅覚があるのか?と疑問に思ったが、ひとまず置いておく。これは、血の臭いだ。この状況はなんだと気を巡らせる。不意に、キラと何かが光った。そちらに向けて足を進めると見えてくる輪郭。後ろ姿でも良くわかるそれはよく知る人物の。
声にならない声で名前を呼ぶと、彼がゆっくりと振り向いた。死角になるからまずしないであろうそちらからの振り向きに若干目を瞠りながら彼の行動を待つ。初めに見える顔の部分は右目の黒いソレ。そして鼻と口、左目がこちらを向く。彼は小さく、冴、と呟いた。そのいつもと違う様子に不安が過る。かれはゆっくり近づいてきて、彼女の正面に立った。少し上にある彼の顔をじっと見つめる。なんだか虚ろな左目は、自分をみているような、いないような、そんな。
小さく名を呼ぶと彼はゆっくり、ゆっくりと右腕を上げた。その手には一刀の竜の牙。
身体が動かない、反応しない。いや、脳が動こうとしていないのだと、気付いた。彼が、彼の左目から、一筋の水流が流れていたから。
わかった、いいよ、アンタなら。
口元に小さく笑みを作り、ゆっくり目を閉じた。




アンタに殺されるなら 喜んで瞳を閉じよう




刃を振り下ろす風の音が耳に奔った。








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