第28章 (・・・暖かい)【佐助・幸村】
甲斐国上田城。冴の現在地はそこだった。一室の縁側に腰掛け、庭を眺めている。そのその隣に座るのは、珍しい人物。
「…なんで俺様ここにいるんだろ…」
「幸村に命じられたからでしょ?」
真田忍隊隊長・猿飛佐助。彼は今、主である幸村に命じられて冴の相手をいていた。自分の仕事が片付くまで、冴の傍にいろ、と。
「別に一緒にいる意味無くない?」
「寂しくないようにって思ってくれたんでしょ。優しいじゃない」
「…それ、優しさ?俺様だって暇なわけじゃないんだけど?」
「幸村に言ってちょうだい」
佐助の愚痴を軽くあしらい、不意に彼に寄りかかる。
「ちょ…冴ちゃーん?」
(あ、こいつ意外に…あたたかい…)
少し涼しい場所にいつからかもしれないが、佐助のあたたかい体温に、眠気が襲ってくる。彼の声を遠くにききながた、冴はそのまま目を閉じた。
「…は…破廉恥でござるー!!!」
「!!?」
突然の大声に勢いよく起き上がり、きょろきょろと見渡して状況を確認する。と、近くで幸村がこちらを凝視しながら真っ赤になって動揺していた。次第に頭が覚醒してきて状況を把握する。仕事を終えて二人の所に来た幸村が、佐助に寄りかかって眠る冴の姿を見て〝破廉恥〟と叫んだのだろう。
「…寄りかかって寝てただけで破廉恥?」
「というか冴ちゃん、無防備すぎない?」
俺様だって男なんですけど、と佐助が苦笑しながら言う。
「いやー…あたたかくてつい」
反省する気は無いようだ。
「さっ、佐助!冴殿に…へ…変な事はしておらぬだろうな!?」
少し復活した幸村が未だ顔を赤くしたまま佐助に問う。
「むしろ俺、起こさないように微動だにもしなかったんですけどー?」
「なら良…くない!!」
「まぁまぁ幸村。佐助は悪くないから。私が勝手に寄りかかって寝ちゃっただけだし」
「し、しかし…」
どうにも煮え切らないらしく、幸村はぐぬぬと呻く。
「だから、私に免じて許してやってよ」
「え、俺様悪くないんだよね!?」
「冴殿が、そうおっしゃられるなら…」
「旦那!?」
上田城の、あたたかなひととき。