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不羈奔放【戦国BASARA】

第18章 私のじゃない。返り血だよ【伊達政宗】




山は不気味なほど静かだった。
米沢城に独り駆けて来た彩輝の尋常でない様子に、政宗はすぐに馬をはしらせた。
「…すげぇ血の臭いだな…」
つん、と鼻にくる臭いに思わず顔をしかめる。足元を見てみれば、あちこちに事切れたモノが転がっていた。それを辿っていくと、その中に立ち尽くしているものが見えた。
「!!」
政宗はそれを視認すると、転がっているモノに足をとられないよう気をつけながら、急いで駆け寄った。
「冴!!」
背を向けていた彼女がゆっくりと振り返る。その目は虚ろがちで危うい。政宗は駆け寄ったそのまま冴を抱きしめた。
「…まさ、むね…?」
「無事、か…!?」
反応があると、今度はバッと離して冴の〝外側〟を見る。その大量の朱に、政宗は大きく目を見開いた。
「おまえ…これ…」
「…あぁ…大丈夫。私のじゃ、ない。返り血、だから」
徐々に意識がはっきりしてきた冴は、額をおさえつつ返した。
「そう、か…」
安堵の息をついた政宗は、再び冴を、今度は柔らかく抱きしめた。
「…あんま、心配かけさせんじゃねぇよ…」
「…ごめん」
すると脇腹をつつく気配があって、冴は政宗の腕の中から抜け出した。
「彩輝」
呼ぶと彩輝は心配そうに弱くないた。
「ごめんね、心配かけて」
撫でようとして、ふと手が朱に染まっている事に気づき、止める。だが彩輝は自ら冴に寄って行った。冴が苦笑しながら撫でてやると、彩輝は嬉しそうにいなないた。
「そろそろ行くぞ。この辺りは、黒脛巾に片づけさせておく」
「…ご迷惑おかけします」
「しかし、なんだってこんなに…」
政宗は考えるような仕草を見せたが、すぐに戻し馬に乗った。今はここから離れて冴を休ませることが先決だ。冴も、「汚してごめん。後で綺麗に洗ってあげるからね」と謝りながら彩輝の背に乗った。

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