• テキストサイズ

不羈奔放【戦国BASARA】

第15章 話し掛けたのは興味本位【真田幸村】↑後





武田領に入って最初に辿り着いたのは、上田だった。上田城城下は。活気があって賑わっている。上田をおさめているのは、『虎の若子』と呼ばれる真田幸村。宿敵らしい政宗いわく、〝とんでもなく熱く真っ直ぐな男〟なのだとか。それがここ城下にも表れているのだろうか。あわよくばその真田幸村とお近づきになりたいものだと思いながら、冴は茶店で団子を頬張っていた。皿に乗せられていた団子を平らげて茶をすすっていると、財布と睨めっこをしている青年が目に入った。歳は冴より一つ二つ下のように見える。
「あと一本分も足りぬか…」
肩を落としてため息をつきしょんぼりした姿に、冴は思わず小さく笑いをこぼした。幸い、彼は気づいていない様子。冴は数秒彼を何気なく見つめた後、ふっと笑った。この青年と関わってみたい。何故そう思ったのかわからないが、冴はすでに軽く手を上げていた。
「女将さん、団子もう二本ください」
青年との距離はさほど離れておらず、普通の声量でも充分聞こえる。彼は小さく反応して、ちらりと冴を見た。その羨ましそうな目に気づいていないふりをしながら、冴は追加の団子を受け取って勘定を払った。冴は団子を一本ずつ両手に持つと、片方を青年に差し出した。
「へっ?」
間抜けな声を上げ、青年が団子と冴を交互に見る。
「良ければ、一本どうぞ?」
「え!あ、いやっ、そっ…某は、我慢、できます、ゆえ…!!」
恥ずかしさからか頬を赤く染めて首を目一杯振って遠慮しているが、目は団子から外れない。
「ほしいんでしょう?」
「う…」
どうやら嘘がつけないタチらしい。
「どうぞ?」
「か…かたじけないでござる…」
青年はすまなさそうな顔で団子を受け取ったが、手にした次の瞬間には嬉しそうに顔を綻ばせていた。すぐ顔に出て、自分に正直な、真っ直ぐで、少し子どものような青年だと冴は思った。団子を嬉しそうに頬張る彼は、見ていてとても微笑ましかった。

/ 72ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp