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不羈奔放【戦国BASARA】

第14章 桜舞う夜に【猿飛佐助】





ひらりと桜の花びらが舞い、地に落ちてその薄い色を朱に染める。冴は刀についた血を薙ぎ払い、さらに布で丁寧に拭った。それを鞘におさめて一息つく。そして、どことも言えぬ方へ声を放った。
「隠れてないで、いい加減出てきたら?」
「あっれー?気づいてたの?いつから?」
半分期待していなかったのだが、返事はあっさり返って来た。だが返って来たのはのんきそうな声だけで、姿を見せる気はないようだ。
「さっき、大岩を背にした時から。位置はまだわかんないけど」
「へー。俺様不覚だったわー」
と言うものの、声に反省の色が無い。忍には間違いないとは思うが、なんて緊張感のない忍びだ。
「ところでちょっと訊きたいことがあるんだよねー。手荒なことはしないつもりだからさ」
つもり、ということは、要は返答次第という事か。
「見回りしてたら丁度さっきの現場を見つけてね。やばいかなーと思ったけど一人で片づけちゃったから、俺様ちょっとびっくりしちゃったよ」
「…最初から、いた?」

「最初って言うと5人くらいの時?さすがに最初から気づかれちゃ、俺様忍失格だよ」
はっきりとしない忍に、いい加減苛々してきた。
「…で?」
「あー、怒んないでよ。それじゃ、本題に入ろうかね。…あんた、甲斐に何の用だ?」
急に低く、殺気のこもった声になり、一瞬鳥肌が立った。
「あれだけ腕が立つのに、ただの旅人、とは言わないよね?何者なわけ?」
口調は軽くなったものの、殺気はおさまる気配がない。
「…ただの、旅人ですよ。ちょっと腕が立つ程度の、ね」
「ほんっとーにそう?」
「誓って、甲斐武田の害になるようなことはしない」
見極めているのだろう。しばしの沈黙が流れる。
「…わかった。とりあえずは信じましょうかね」
「ありがとう」
「とりあえずはって言ってんのにね。まぁいいけど。こいつらは俺が片しといてあげるよ」
「…ありがとう」
冴はひとつ息をついて上を見上げた。今の出来事など何も無かったかのように、桜がひらりひらりと舞っている。夜桜、いいな。いつか時間があれば夜桜で花見をしに来よう。それにしても、もう野宿をする意味はなさそうだ。うっすら差し込んでくる陽の光が目にしみる。冴は一笛吹き、彩輝と共に山を下りて行った。


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