第11章 2度目の『初めまして』【前田慶次】↑後
祭の賑やかな音で目が覚める。冴はあれから宿をとり、京で一晩を過ごした。翌日の今日も祭はまだまだ続くらしい。もう一日楽しもうかと、冴は再び京の街を歩いていた。昨日は回りきれなかった店や新しく出た店を見て回っていると、前方に女性ばかりの人だかりがある事に気づいた。その中心にいるのは、長身の黄色。
「……」
改めて礼を、とか、名前を聞いていないから、とか、用件はあるが、今は関わりたくないと思った。しかし冴の進行方向にその人だかりはある訳で。その横を通らなければ道はない訳で。覚悟を決めて素知らぬふりで通過しようとしたが、「キキッ!」という鳴き声に反応して彼の方を見てしまう。と。
「あ」
「……」
目が、合ってしまった。
「ちょっ、ちょっと待ってよ!」
女性たちに囲まれているのをいいことに、冴は走って逃げた。後ろで、「ちょっと慶ちゃんあの子何なんー?」とかなんとか聞こえてきたが、お構いなしだ。
「あー!ッ、夢吉!」
「キキッ!」
冴の姿は、すでに雑踏の奥に消えていた。