第7章 サーカス
「わたしが知ってるのは、これで全部。ごめんね、少なくて」
「いや、充分だ。……やっぱり、首領には伝えねェのか?」
「うん。いまはちょっと、顔合わせるのが気まずくてね。森さんには、中也から伝えておいてよ。……その方が、中也も気が楽でしょ」
いきなり核心をついてしまったかな、と綴は少しだけ反省した。いつも言われる。〝綴は前置きがないから、その分配慮もない〟と。
自分たちの間柄に配慮なんてものは必要ないと、綴は思っている。なぜか、と問われれば、それは自分と中也が心臓より深いところで繋がっているからだ、と。言いたいことは言って、訊きたいことは訊き、隠し事の追及はしない。
──わたしたちは、ずっと前からそうだったじゃない。
「……手前には、いつまで経っても敵わねェな」
「ふふ、中也がわたしに勝つなんて、あと二年くらい早いよ」
──追及はしなくても、これぐらいなら赦されるよね。
「ね、中也。やっぱり、お代は頂こうかな」
「手前裏で守銭奴ッて呼ばれてンの知ってるか?」
「わたしの地獄耳が聞き逃すわけないでしょ」
綴は、自身を守銭奴よりがめついと思っていた。なぜなら、その頃はまだ親代わりであった森にさえも値段交渉を試みていたから。ちなみに、いまはもう綴にとって森は親代わりでも何でもなくなったので、次の機会には法外な値段を吹っ掛けようと思っている。
「何が望みだ?」
「──中也の、時間をちょうだい。今日、これから夜まで」
「時間? これからッていうと……約半日か。別にかまわねェが、なんのために」
「ねぇ、中也。──デート、しよっか」