第3章 間奏曲
綴は逃げるように森の執務室をあとにした。自分の知らない森が、豹変した森の態度が、とほうもなく怖かった。
──豹変? いや、もしかしたら、あれが素顔なのかもしれない。
森はもう最大限信用できるひとではなくなってしまった。別にいいよ、と綴はひとりごちる。
「別にいいよ。わたしは、森さんに忠誠を誓ったわけじゃなかった。組織に命を捧げる覚悟でここにいるわけじゃない」
自分に言い聞かせるように言って、綴はパソコンに向き直った。
「たしか、組合、だったよね……」
まさか、太宰を追い出す要因となった〝海外異能組織〟を、四年前とは別のかたちで追うことになるとは。
綴は、腕利きの情報屋として、独自に組合を調べることに決めた。