第7章 7
アーサーの部屋を後にして私室目指して歩いていると…
「アナスタシア」
不意に背後から呼びかけられる。声に反応して振り返ると
「テオさん…?」
テオドルスさんが立っていた。
「日中お前が1人で居るのは珍しいな。屋敷の奴らの手伝いは無いのか?」
「今日は特に何も言われていません。実は今までアーサーさんの部屋に居たのですが、もしかして私に御用でしたか?」
そういえば、早朝に目覚めてアーサーの部屋へお邪魔して…
いったい何時間眠って居たんだろう…
「アーサーの部屋に?」
私の返事にテオさんは少し驚いたような反応を見せる。
「はい。早朝に目が覚めてお屋敷を探索していたら、偶然アーサーさんの部屋から明かりが漏れていて…
中を覗いても誰も居なかったので、少し気になって入ってしまったんです。あ、アーサーさんの部屋だと知ったのは彼が部屋に戻ってきてからなんですけど…」
私が説明すると、テオさんは納得したように頷く。
「そうか。いや、アーサーが部屋に他人を入れるのは珍しくてな。あの駄け…あの女以外は…」
あの女、というのはきっとアーサーが愛している人間の女性のことだ。
「もしかして私…アーサーさんに失礼なことをしてしまったのでは…」
きっとアーサーはその女性以外の人を部屋に入れたくは無かったんだ…それなのに私は勝手に入り込んでベッドまで使わせてもらって…
知らなかったとは言え、自分がとてつもなくデリカシーの無いことをしてしまったと気が付き申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「アーサーが何も言わなかったなら気にすることは無いだろう。
少なくとも早朝から今まで居座らせたんだから。」
そんな私の心情を察したのか、テオさんがフォローしてくれる。
「…そういえば、今っていったい何時なのでしょうか?お昼くらい…ですか?」
時間を確認していなかったことに気が付きテオさんに尋ねる。
そんなに長い間居座っていなければいいけど…
「何を言っている?今は15時だ。昼にしては少し遅めだな。」
さらりと告げられた時刻に驚愕してしまう。
15時?そんな…少なくとも10時間程はアーサーさんの部屋に居座ってしまったなんて…
愕然としている私にテオさんが声をかけてくれる。