第7章 7
「私にくれるつもりだったの?」
「当たり前じゃーん。君のために淹れたんだけど?」
「本当?嬉しい。ありがとうアーサー。」
思わぬ言葉に頰が緩む。
するとアーサーは
「…あーあ、そんな顔されたら…あげない訳にはいかないじゃん。
可愛いって言ったのを取り消して、格好いいって言ってくれたらあげようと思ったのにー。」
「ふふっ、アーサーは格好いいよ?」
そう答えると、アーサーは一瞬びっくりしたような表情になり…
「もー…、君って本当…」
小さく呟きながらカップにコーヒーを注いでくれた。
「ありがとう!あ、あのねアーサー…お願いがあるんだけど…」
「んー?どしたの?」
「えとっ…ミルクとお砂糖が欲しいな、なんて…」
少しだけ恥ずかしくて小さな声でお願いをする。
そんな私の姿を見たアーサーはいつもの悪戯っぽい笑顔を浮かべ…
「ふーん…アナスタシアはブラックコーヒーが飲めないんだー?
かーわいー」
先程までと立場が逆転し、楽しそうに笑うアーサーの顔を見つめる。
「だって…苦いの、あんまり慣れていないんだもの。」
私が拗ねたような声で反論すると…
「キミの可愛いところを知れたから、さっきの言葉は忘れてアゲル。はい、ミルクにお砂糖。足りなかったら追加するんだよー?」
拗ねる私を他所に、アーサーはカップにお砂糖1つとミルクを入れてくれる。
勿論、余裕たっぷりな表情を浮かべたまま。
子供扱いされてる気がするけど…
「アーサー…お砂糖、もう1つちょうだい…?」
「ぷっ、キミってやっぱり…」
私がお願いすると、アーサーがぷっと吹き出す。
笑われた、絶対子供扱いされているわ!
少しだけ頰を膨らませてみる
「なあに…?子供みたいって言うんでしょ?」
「んー?別にー?可愛いな〜って思っただけ。
甘いものが好きなら、今度イイトコロに連れて行ってあげる。」
「いい所って?」
「それは秘密ー。ほら、コーヒー冷めちゃうよ。それともココアの方が良かった?」
また馬鹿にしてる…
むっとしながらもミルクと砂糖がたっぷり入ったコーヒーを口に含む。甘くて幸せな気持ちになる。
「美味しい…」
「そー?良かった。今度はキミ好みに淹れてあげる。」
「ほんと?ありがとう!」
アーサーと小さな約束を交わし、私は部屋を後にした。