第6章 6
翌日
「ん〜…」
朝。もともと寝起きは良い方ではないけれど、この日は珍しく朝日が昇るのと同時に目が覚めた。
「まだ早いけど…眠気覚めちゃった…中庭にでも行ってみようかな…」
着ていたパジャマを脱ぎ、シャーベットグリーンのワンピースに着替える。
顔を洗って、簡単に身支度を済ませる。
廊下に出てみるが、皆眠っているんだろう
物音一つしない。
「皆のこと起こさないように、静かに移動しよう…」
そろそろと長い廊下を歩いていると、僅かにドアが開き中の光が漏れている部屋を見つける。
「もう起きている人が居るのかな…?誰の部屋だろう…」
基本的に伯爵以外の手伝いをするときは私室では無くアトリエやホールに呼ばれることが多いため、個人個人がどこの部屋を使っているのかは知らなかった。
「邪魔しちゃ悪いし、こっそり覗いてみようかな…」
私は光が漏れている部屋をこっそりと覗き見る。
中は茶色を基調とした落ち着いた雰囲気で、大きなソファと…
「なんだろ、原稿用紙…?」
机に無造作に置かれた原稿用紙が見える。
「誰も居ないのかな…?」
悪いとは思いつつ、そっと部屋へと忍び込む。
机に置かれた原稿用紙には、書きかけの文字が綴られていた。
「なんだろう…日記?では無さそう…小説…?」
彼と暮らしていた頃に同じような物を見たことがあった。
確か小説と言っていたはず。その時に少しだけ読み方を教えて貰っていた。
「うんと…どれが最初のページかな…?」
慣れない作業に四苦八苦していると、部屋の扉が大きく開く。
「…あれ?アナスタシア…?どーしたの、こんな朝早くにー?」
突然声を掛けられてビクッと身体が跳ねる。
「アーサー?ここはアーサーの部屋…?」
「あれー?知ってて来てくれたんじゃないんだ?
そ。ここは俺の部屋。そういえば部屋に来るのは初めてだったねー」
「勝手に入ってごめんなさい!明かりが漏れていたから、気になって…」
「気にしなくていいよー。これ、読んでたの?」
アーサーが原稿用紙を指差す。
「ご、ごめんね勝手に…なんだか見たことがあったから気になったの…でも、最初のページがわからなくて…まだ読んでないから安心して!」
焦って早口になってしまう。