第6章 6
その日の晩
「なんだか大変なことになってしまったな…」
昼間決まったことを思い出す。
「明日からはアーサーさんに力を貰うのね…」
利害関係の一致したパートナー。確かにその条件は正しいような気がした。
「お互いに愛する人が別に居るから、面倒なことにもならないし、ね…」
そう呟くと、私は彼の灰を撫でる。
「貴方のことも…早く埋めてあげないとね…月が綺麗に見える場所、探すから…」
ベッドに横になっていると、扉をノックする音が聞こえる。
「伯爵かな?どうぞー?」
伯爵に力を分けてもらうのもとりあえずは今日が最後か…
そんなことを考えていると、扉が開きノックした人物が中に入ってくる。
「お邪魔しまーす」
「え、アーサーさん?」
扉を開けて中に入ってきたのはアーサーさんだった。
慌ててベッドから起き上がる。何故?契約は明日からなのに…
「アーサーさん?どうしたのですか?契約は明日からじゃ…」
「んー?伯爵に頼んで代わって貰っちゃったー。明日になる前に、少し話したくてー。それとも、俺じゃ不満?」
「そんなこと…!少し驚いてしまって…ごめんなさい。」
そう答えるとアーサーさんは唇を尖らす。
「仮にも明日からパートナーだって言うのに、もっと砕けてくれてイイんだよー?」
「く、砕け…?アーサーさん、それはどういう…」
「もー、また。敬語は要らないよって言ってるのー。あと、さん付けもナシね。」
「えっ、何故ですか?」
「だから敬語禁止ー、今度敬語を使ったらお仕置きだよ。」
「お、お仕置き…?」
「そ。お仕置きー。」
よくわからないけれど、嫌な汗が流れる。
「わ、わかりまっ…わかった、それなら私のこともアナスタシア、と…」
「ん。上出来。アナスタシア、ね。」
「ええ…」
アナスタシア…彼と過ごしていた時はアナ、と呼ばれていた。
けれどその呼び方をされると…きっとまた泣いてしまう。
「ねー、アナスタシア。食事する?」
「いいえ、今日は平気。本当は毎日食べることは無いの。けれど伯爵は毎晩分けてくれていたから…だから暫くは平気よ。明日だって、無理して来なくてもいいの。
あ、でもアーサーが食べたいならわけてあげるから、遠慮はしないで!」
そう答えるとアーサーがまた唇を尖らせる。