第2章 異世界召還
日が沈み辺りが夕やみに染まり夜がやって来た
湯あみを済ませ夜着をまとったレイは
暗い顔のまま寝室にある椅子に腰を掛けていた
「クラーロ」
呼ばれ顔を上げると上機嫌で部屋に入ってきたマッドネスが
手を差し出してきた
覚悟を決めレイは震える手をそっと重ねた
好きでもない相手に初めてを捧げなくてはいけない
薄暗い室内のベットに横たえられマッドネスを見上げる
現実を見たくて瞳を閉じた
固く閉じた瞳から流れる涙は破瓜による涙ではなかった
その夜を境に毎夜のように部屋に訪れるマッドネスに抱かれる毎日
「クラーロ様」
「・・・・・」
ここにきて唯一心を開いていたマリーにも
レイは心を閉ざし笑顔を向けることが無くなった
ある日の夜レイを抱いてマッドネスは満足して部屋を出て行った
部屋に一人になったレイは
いつもよりも部屋が明るい事に気づき窓の外を見つめた
そこには綺麗な丸い月が浮かんでいた
今日は満月、レイがこの世界にやってきた時と同じ
「・・・ねえお月様。
私の本当の王子様はどこにいるの?」
会いたい・・・と小さく呟きながら
月を見て静かに涙を流す
"その願い叶えてやろう"
月から光が降り注ぎレイを包み込んだ
異変に気付いたマッドネスがレイの部屋に駆け込んできた
そこにはレイの姿はなくランプの精が佇んでいた
その手には黒く輝く美しいランプを手にしていた
「ランプの精!クラーロはどこだ!?」
"ここにいる"
手にしていたランプをすっと差し出した
"そなたにはこの者と愛情を育めと言ったはずだぞ
なのにこれはどう言う事だ?
この者は心を閉ざしそなたを拒否している
そなたは・・・いや、お前はこの者に何をした?
この者は間違いなくお前の唯一無二の姫だ
だが今のお前ではこの者を幸せには出来ないようだ
お前が改心し心から愛することが出来る日まで
レイには長き眠りについてもらう
それが今世なのかはたまた来世なのか
いつになるかはお前次第だ"
そう言い残しランプの精は姿を消した
銀色に輝くランプは消え失せ
マッドネスの手には黒く輝く美しいランプのみが残った