第3章 王太子
"・・・・・・ぃ"
またいつもの夢だ
姿は見えないが美しくて
それでいて憂いに満ちた声
"・・・・・寂しい"
なぜ?
"・・・・・会いたい"
誰に?
"・・・・・私の―――"
待ってくれ!
「誰なんだっ!?」
「!?」
自分の声で目が覚めゆっくりと辺りを見回す
ここは自分の執務室、机の上には書類の山が並んでいた
「テリオス、また例の夢か?」
「・・・ああ」
この男はシュヴァリエ・オンブル
幼馴染みで王太子である俺
テリオス・エクレール・デシエルトの護衛と
騎士団団長を兼任している
短く刈り上げた金色の髪
緑色の瞳で人懐っこい笑みで部下に慕われている
しかしひとたび剣を握れば
鋭い眼光になり向かうところ敵無し
女性に弱いのが玉に瑕である
「最近は頻繁に見るようになってきたようですね
これはもう少し詳しく調べてみなくてはなりませんね」
顎に手をおき神妙に考え事をする男
こちらもシュヴァリエと同じく幼馴染みで
名はラフィネ・オネット
金茶色の髪に栗色の瞳
常に微笑みを浮かべているが
本性は真逆その笑顔に騙された者は数知れず
俺の側近でゆくゆくは宰相になる予定だ
「もっかい書庫で文献でも調べるか?」
「シヴァー、馬鹿だとは思ってましたが
貴方は馬鹿ではなく大馬鹿でしたか」
はぁっと頭を押さえため息をはく
「お馬鹿な貴方にも分かるように
説明してあげましょう
テリオスが夢を見始めてはや5年です、ご ね ん」
「分かってるよ!
毎日暇を見つけては書庫に通って
端から端まで苦手な本読み漁ったんだからな」
ニカッと笑いシュヴァリエは胸を張った
「では私の言いたいこと分かりましたよね?」
そんなシュヴァリエにラフィネは
にっっこり微笑みを浮かべた
「おうっ!だからもう一回端から・・・・・」
「あぁ、本当に・・・これだから
体ばかり鍛えている人は嫌いなんですよ
脳まで筋肉になるんですね」
これ見よがしに大きなため息を吐き出した